大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和44年(く)492号 決定 1970年1月20日

少年 S・I(昭二六・七・一八生)

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告申立の理由は、記録に編綴の抗告申立書に記載のとおりであるから、これを引用し、これに対してつぎのとおり判断する。

(1)  少年が不服とする「昭和四二年六月、他の者と一緒に新宿でした三〇万円以上の窃盗」とは、記録によると、

A外三名と一緒に、いずれも新宿区内のアパートに入つた空巣、つまり、

<1> 昭四一・一・〇頃下〇○

○塚○い方で

現金

三〇万

<2> 昭四一・二・△頃〃

六万六、〇〇〇円位

<3> 昭四一・七・〇〇頃〃

菊○荘

○島○子方で

未遂

<4> 〃 〃

○沼○子方で

現金

二万円位

<5> 昭四一・八・〇〇頃〃

ち○り荘

○原○文方で

一万七、〇〇〇円位

<6> 昭四二・一・〇頃西〇〇〇

児○荘

○本○司方で

一万五〇〇円位

<7> 昭四二・六中旬頃下〇〇

菊○荘

○沼○子方で

一万五、〇〇〇円位

計現金

四二万八、五〇〇円位

の窃盗を指すものと思われる。

(2)  右の各事実について、本件記録をよく調べてみると、少年は、警察、検察庁での取調に対して、「B、C、D、右の拇指と小指のない男と一緒にやりました。ただ自分は、この連中に誘われて、見張り等をした」旨を述べ、家庭裁判所での審判の際(四三・三・一三)にも、「事実は、そのとおり間違いない。自分は、運転ができたので、大体車の中で見張りをしていた」旨を述べており、各被害者の被害届等とも照らし合わせて考えるとき、少年が、他の共犯者と一緒に右窃盗をしたことは、間違いない事実と認めることができる。なお、少年が、「見張りをしていただけで、直接手を下していない」ことも、またそのとおりではあるが、そうであつても、法律上は、やはり窃盗の共犯の責任を負うことになるのである。「少年は、右窃盗をした者である」と認めた原決定は、正しい決定で、間違つた点はない。

その他、記録をよくよく調べてみても、少年を中等少年院に送致すると決めた原決定には、間違いはない。少年の言分を認めるわけにはいかない。

本件抗告は、理由がないから、少年法二三条一項により、棄却することとして、主文のとおり決定する。

(裁判長判事 江里口清雄 判事 上野敏 横地正義)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例